2024/04/21
認知行動療法と自閉症との関係は?概要や主な手法なども解説
認知行動療法とは、物事の捉え方に働きかけることで、心に溜まったストレスを軽減する目的でおこなう心理療法のことです。自閉症の方にも効果的とされていますが、認知行動療法とは何か、そしてなぜ効果があるといわれているのでしょうか。
そこで今回は、認知行動療法と自閉症との関係について解説します。それぞれの概要や、認知行動療法として用いられる主な手段についてもご紹介するので、ぜひご覧ください。
自閉症とは
自閉症は、知的障害や注意欠陥多動性障害などを含む発達障害のひとつで、「ASD」とも呼ばれます。現在は一般的に、アスペルガー症候群などをまとめて「自閉スペクトラム症」の名前で表現されるようになりました。
自閉症の主な特徴
自閉症の特徴はさまざまであり、一人ひとりの特徴の強弱も異なります。発達段階に応じてあらわれ方も違うものです。主な特徴としては、以下の3つのパターンに分類できます。
<自閉症の主な特徴>
・対人関係に関する特徴
・コミュニケーションに関する特徴
・興味や行動に関する特徴
自閉症の重症度に応じてさまざまな症状があらわれ、上記のほか、感覚が過敏または鈍くなる特徴もあるなど、みられる症状には個人差があります。
対人関係に関する特徴
自閉症の方は、興味や関心を他人と共有することはほとんどありません。感情を共有あるいは汲み取ることが難しい点も特徴的で、人との関わり方も一方的になる場合が比較的多いです。人間関係を築くのが苦手で、態度も受け身になることが多く、一人で過ごすことを好みます。
コミュニケーションに関する特徴
自閉症の方のコミュニケーションに関する特徴としては、言葉の発達に遅れがみられる点が挙げられます。相手が話した言葉をそのまま口にするオウム返しや、ニュアンスなどを考慮せず言葉をそのまま受け取ることも、コミュニケーションに関する自閉症の特徴です。人によっては会話が成立しないこともあります。
興味や行動に関する特徴
興味や行動に関する特徴として、自閉症の方は複数ではなく、ひとつの物事に対して興味を持つ傾向にあります。こだわりが強いことも多く、同じ流れの作業を繰り返すこともあります。また、興味を抱いたことに対する知識量が豊富である点も、自閉症の主な特徴です。
認知行動療法とは
認知行動療法とは、物事に対する捉え方や受け取り方である認知、あるいは行動の癖を修正し、自由な思考力と行動力を身につける心理療法のことです。英語名(Cognitive Behavior Therapy)を略して、「CBT」と呼ばれることもあります。
認知行動療法と自閉症との関係性
認知行動療法は自閉症と関連があり、生きづらさを抱いている場合、問題の解消に役立つといわれています。これには認知の癖、いわゆる「認知のゆがみ」が関係しています。
認知のゆがみとは
認知のゆがみとは、物事の捉え方や考え方が極端になることです。たとえば友人からメールの返信が来なかったとき、認知にゆがみが生じていると「嫌われているからだ」とネガティブに物事を捉えやすくなります。必要以上に落ち込む、あるいは不安を感じることもあるでしょう。
認知や感情は行動と関連しているため、その後の行動も消極的になりやすいです。パフォーマンスの低下にもつながり、次第にストレスも溜まっていくと考えられます。
自閉症を含む発達障害の方は認知のゆがみが起こりやすいといわれており、日常生活を苦痛に感じる方も少なくありません。生きづらさと関係の深い認知のゆがみは、「スキーマ」によるものです。
スキーマを整えて生きづらさを解消
「スキーマ」とは、認知の根底にある個人の価値観やこだわりのことです。自閉症の方はこだわりが強く、物事を白か黒に分けて考えたり、「~すべき」と決めつけたりする傾向にあります。日常生活で起きる出来事に対して柔軟に対処することができず、結果として負の感情につながりやすいのです。
認知行動療法では認知のゆがみを修正する効果が期待されており、身の回りに起きた出来事に対して過度な心配や不安を感じにくくなります。精神的なストレスも軽減でき、日々の暮らしを楽しく感じる機会も増やせるでしょう。
また、認知行動療法をおこなうことで、うつ病やパニック障害などの再発を防止しやすくなります。ストレスの影響で精神疾患を発症している自閉症の方にも、有効な手段といえるでしょう。
認知行動療法の主な手法
認知行動療法では、実際に以下の手法が用いられます。
<認知行動療法の主な手法>
・曝露療法(エクスポージャー法)
・セルフモニタリング法
・リラクゼーション法
・スキーマ療法 など
ほかにもコラム法や問題解決法など、さまざまな手法があります。
曝露療法(エクスポージャー法)
曝露療法とは、人混みなど不安に感じる場所や事柄と向き合い、克服できるようにする手段です。段階的に不安な事柄と対峙するため、ネガティブな気持ちを少しずつ前向きに改善できます。
セルフモニタリング法
セルフモニタリング法とは1日の活動内容と気持ちを記録し、ストレスへの対処法などを把握する手段です。ストレスを感じるタイミングなどを客観的に理解でき、心と身体の状態を整えられる点がメリットとして挙げられます。
リラクゼーション法
リラクゼーション法とは、心と身体の緊張状態をほぐし、不安な気持ちを解消させる手段です。身体がこわばった状態にあると精神も影響を受けやすく、緊張状態に陥ることがあります。深く息をするなど呼吸を工夫することで改善を図ります。
スキーマ療法
スキーマ療法とは、価値観やこだわりのうち、人生に影響をおよぼしかねないスキーマに働きかける手段です。認知行動療法では効果が薄い方、生きづらいと感じている方に適しています。
働きかける対象は、物事を白か黒に分けてしまう思考や、これからおこなうことに対して「~すべき」と断定してしまう考え方などです。対人関係や感情にまつわるスキーマも含まれます。
スキーマ療法では過去を振り返り、認知のゆがみに関連する不適切なスキーマを探します。対象のスキーマを見つけたら検証をおこない、価値観などを新しく書き換えることで悩みを解消することが可能です。
認知行動療法を受ける前に知っておきたいこと
認知行動療法を受ける場合、結果があらわれるまでには一定時間を要します。数回のカウンセリングで終わるケースもありますが、数十回かけて改善に取り組むこともあるものです。とくにスキーマ療法では人生をさかのぼって検証するため、かなりの期間が必要と考えておきましょう。
また、認知行動療法は保険適用外となる場合があります。認知行動療法を受けたときの費用が自己負担になるかどうか、それとも保険が適用されるか、事前に確認しておくと良いでしょう。
まとめ
認知行動療法は、自閉症の方が日常生活を送るなかで感じる生きづらさの改善に効果があるとされる心理療法です。認知のゆがみの根本的な原因であるスキーマに働きかけることで、精神的なストレスの軽減につながります。実際に認知行動療法をおこなう際はセルフモニタリング法やスキーマ療法など、個人の状況に適した手法を選んでカウンセリングします。
横浜市にある「キミィ・メンタル・サプリ」では、主に認知行動療法を用いたカウンセリングを実施している点が特徴です。もしも認知行動療法による効果がみられない場合には、スキーマ療法での改善もおこないます。自閉症で精神的ストレスや生きづらい毎日にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
2024/04/13
認知行動療法とスキーマ療法の違いとは?メリットやデメリットなども解説
「認知行動療法」と「スキーマ療法」はどちらもカウンセリングの一種ですが、特徴やメリットなどさまざまな点に違いがみられます。しかし、認知行動療法とスキーマ療法の違いについてはご存知ない方も多く、あまり知られていないのが現状です。
そこで今回は、認知行動療法とスキーマ療法の違いやメリットデメリット、それぞれのおすすめの方について解説します。カウンセリングについて興味がある方は、ぜひご覧ください。
認知行動療法とスキーマ療法の違い(1)概要や特徴
認知行動療法とスキーマ療法については、まず概要や特徴に違いがみられます。
【概要・特徴】認知行動療法
認知行動療法とは、現実の物事に対する考え方や捉え方である認知に働きかけることで、日常生活で感じる精神的ストレスを和らげる方法のことです。認知の一種である「自動思考」、つまりある出来事が生じた瞬間に思い浮かぶイメージや考え方を改善することが特徴といえます。
たとえば、友人にメールしたにもかかわらず、返信が来なかったとします。このとき、人によっては「返信がないのは嫌われているからだ」と後ろ向きに捉え、気分が落ち込む方もいるでしょう。一方で、「メールに気付いていないだけだろう」と前向きに考え、いつもと変わりない日常を送る方もいます。
同じ出来事が起きたときに後ろ向き、あるいは前向きに考えるかどうかについては、認知の癖による影響が大きいです。ネガティブな認知になりやすいと、気分やその後の行動にも悪影響をおよぼしやすくなります。このような過度なマイナス思考、つまり認知のゆがみを整えて、憂うつな気分になるリスクを軽減するのが認知行動療法の目的です。
【概要・特徴】スキーマ療法
スキーマ療法とは、心の問題や生きづらいと感じてしまう原因に根本から働きかけることで、日常生活を送りやすくする方法のことです。認知行動療法を発展させたものとされており、自動思考よりも深い位置にある「スキーマ」に焦点をあて、治療をおこなうのが特徴といえます。
そもそもスキーマとは、自分や相手、世界に対して抱いている価値観やイメージのことです。スキーマは幼少期から現在にいたるまで、過去の実体験による影響にもとづいて形成されます。「丸くて赤い、シャキシャキとした果物」との情報から「リンゴ」を思い浮かべるのは、スキーマの形成によるものです。
一方で、過去の失敗や悲観的な出来事をきっかけにネガティブなスキーマが形成されることもあります。スキーマは自動思考の核であり、物事に対する瞬間的な思考に影響を与えるものです。過去の出来事がトラウマとなり、「怖い」と感じて日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。
スキーマ療法は、そのような人生に悪影響をおよぼす可能性があるスキーマを新しく書き換えることが目的です。カウンセラーが一緒に過去を振り返り、今を生きづらく感じるようになったきっかけを探します。
認知行動療法とスキーマ療法の違い(2)メリットやデメリット
認知行動療法とスキーマ療法は、それぞれメリットとデメリットが異なります。
【メリット・デメリット】認知行動療法
認知行動療法をおこなうメリット・デメリットは、以下のとおりです。
<認知行動療法のメリット>
・薬物による治療と同程度の効果が期待できる
・早急にカウンセリングすることで、精神疾患を予防できる
・副作用がなく、比較的安心しておこなえる
認知行動療法は治療に薬を使用しないため、薬物療法をおこなった場合にみられる副作用が起こりにくいとされています。早期カウンセリングであれば、心の病になる前に対処でき、重症化リスクの予防にもつながるのです。さらに、認知行動療法は認知のゆがみを是正する心理療法なので、心の病にかかった後のケアとして再発を防ぐメリットもあります。
<認知行動療法のデメリット>
・費用がかかる場合がある
・治療が長期的になる
・効果を感じにくい場合がある
認知行動療法のデメリットとしては、心の病の種類によっては保険が適用されないケースがある点が大きいです。長期的な視点での治療を必要とするため、費用もある程度かかると考えておかなければなりません。人によっては治療の効果を感じにくいこともあるため、デメリットをふまえて検討することが大切です。
【メリット・デメリット】スキーマ療法
スキーマ療法のメリット・デメリットは、主に以下のとおりです。
<スキーマ療法のメリット>
・心理的な問題を根本から解消できる
・心のなかに新たな価値観が生まれる
スキーマ療法は、生きづらさの原因である過去の失敗などを見つけ手放すために、新たな価値観を身につける心理療法です。心の奥深くにあるさまざまな問題と向き合うため、根本から原因を解消するメリットがあります。
<スキーマ療法のデメリット>
・カウンセリング時に辛い経験を思い出す必要がある
スキーマ療法では治療のために過去のトラウマや失敗などを思い出す必要があり、気持ちが激しく動揺する可能性があります。心が辛い状況の方はさらに苦痛が増す恐れもあるため、注意が必要です。
認知行動療法とスキーマ療法の違い(3)おすすめの方
認知行動療法とスキーマ療法は、おすすめできる方の特徴にも違いがあります。
【おすすめの方】認知行動療法
認知行動療法がおすすめの方は、以下の特徴に当てはまる方です。
<認知行動療法がおすすめの方>
・人間関係がうまくいかず悩んでいる方
・考え方に自信が持てない方
・誰かに頼らず、自分で対処する力を身につけたい方
・考え方を周囲にも押し付けているのでは、と悩んでいる方
・うつ病やパニック障害、強迫性障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の方
認知にゆがみがあるとネガティブ思考に陥りやすいです。周囲の言動や行動のすべてをマイナスなイメージとして受け取り、次第に人間関係に対して悩む方におすすめの心理療法です。さらに、「自分が間違っているのでは」との考えが身につき、なかなか自信を持てなくなってしまう方にもおすすめできます。
認知行動療法は認知のゆがみを戻し、極端なネガティブ思考の改善を図るものです。周囲の言葉や行動から必要以上に恐怖を感じにくくなるため、人間関係に対する不安解消に役立ちます。
また、認知行動療法は多くの精神疾患などに効果的との結果が示されています。先に挙げた精神疾患のほか、不安症や統合失調症などに悩んでいる方にも認知行動療法は有効といえるでしょう。
【おすすめの方】スキーマ療法
スキーマ療法がおすすめの方は、以下の特徴に当てはまる方です。
<スキーマ療法がおすすめの方>
・生きづらさに悩んでいる方
・認知行動療法では結果が得られない方
・アダルトチルドレン、境界性パーソナリティー障害の方
スキーマ療法では、生きるうえで自分を苦しめるスキーマを知り、それを修正・書き換えることで価値観やこだわりを根本から変えていきます。今まで感じていた「生きていく辛さ」を解消し、日々の生活を心から楽しめるようになりたいと考えている方におすすめです。
また、スキーマ療法は認知行動療法が発展した心理療法です。認知行動療法を試しても効果が出ない場合、自動思考よりも深いスキーマに働きかけることで症状が改善される可能性もあります。
さらに、アダルトチルドレンや境界性パーソナリティー障害と診断された方にもスキーマ療法は効果的です。アダルトチルドレンも境界性パーソナリティー障害も、発症する原因のひとつに家庭環境が関係する場合があると考えられています。過去の出来事や経験を振り返り、自分を苦しめる価値観の治療をおこなうスキーマ療法とは相性が良い心理療法です。
まとめ
認知行動療法は自動思考に働きかけて認知のゆがみを改善する心理療法です。一方、スキーマ療法は、過去の体験からつくられた価値観に働きかけて問題解決を図ります。自分に自信がない方やパニック障害などにお困りの方は「認知行動療法」、心の問題を根本から治したい方は「スキーマ療法」がおすすめです。
横浜市港南区の”キミィ・メンタル・サプリ”では、認知行動療法やスキーマ療法でのカウンセリングを行っております。日頃、ついネガティブに考えがてしまう方や生きづらさを感じている方は、是非一度ご相談にいらしてください。
2024/04/07
認知行動療法の種類とは?それぞれの方法や効果について解説
認知行動療法とは、物事に対する受け取り方・捉え方である「認知」に働きかけをおこない、心に溜まったストレスを軽減する心理療法です。認知行動療法を実施する際はひとつの手段をとるのではなく、複数の手法から必要なものを選択し、治療を進めていきます。
今回は、認知行動療法に用いられる手法にはどのような種類があるのかご紹介します。種類ごとの効果についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
認知行動療法の種類
認知行動療法の種類は、大きく分けて「行動療法」「認知療法」「その他の療法」の3つです。もともと行動療法と認知療法は異なる分野として考えられていた心理療法でしたが、両者を統合して認知行動療法と呼ばれるようになりました。
「行動」と「認知」・「その他」とそれぞれに働きかける治療をおこなって認知のゆがみを修正し、心の負担を軽くすることを目指します。
行動療法
「行動療法」とは、行動に働きかけをおこない、適切な行動に変えることで不安感などの負の感情を少しずつ減らしていく心理療法です。種類はいくつかありますが、「曝露療法」や「呼吸法」などが行動療法に当てはまります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
曝露療法
曝露療法とは、不安に感じる物事を克服するためにおこなう認知行動療法です。「エクスポージャー法」と呼ばれることもあります。
不安な物事や状況を洗い出し、克服しやすい順番に並べることから始めるのが、曝露療法です。そのなかで一番克服しやすそうなものから経験を重ね、段階的に挑戦を進めます。少しずつレベルを上げていくことで、最初は無理だと感じていた物事も克服して自信につながるでしょう。
モデリング法
モデリング法とは、恐怖心や不安を抱いている物事に他者が取り組んでいる様子を見て、マイナスなイメージを払しょくするための認知行動療法です。自分が怖いと感じるものに対して他者が難なく接している姿を見ると、人は次第に恐怖心が薄まり、同じ場面でも相応の対応をとれるようになります。
モデリング法の具体例として、猫を怖がる方に、猫と楽しそうに遊ぶ方の姿を見てもらって症状を解消する方法が挙げられます。
リラクセーション法
リラクセーション法とは、身体をほぐしてリラックスさせて、過度な不安や緊張をなくす認知行動療法です。人は、身体が緊張し続ける状態をストレスと捉え、不安を感じる場合があります。身体の力を抜いてリラックスさせることで緊張状態から解放され、不安な気持ちを落ち着けやすくなるのです。
呼吸法
呼吸法とは、自律神経に働きかけをおこない、リラックスをうながす認知行動療法です。意識して呼吸をすると自律神経の働きが緩やかになり、緊張状態がほぐれていきます。心身ともに緊張によるストレスから解放され、穏やかな気持ちになれるでしょう。
セルフモニタリング法
セルフモニタリング法とは、自分のことを自分自身で観察し、ストレスや疲労の蓄積具合を確認する認知行動療法です。自己観察をおこなうと、普段の生活では見落としがちなストレスや疲れを感じるポイントを認識しやすくなり、対処することで心身の健康につながるのです。
セルフモニタリング法では、自分自身の過去の活動と、気分を振り返って点数化して書き出します。どのような出来事が気持ちにどう影響をおよぼしているのか客観視できるため、ストレスを解消しやすいなどの効果が期待できます。
バイオフィードバック法
バイオフィードバック法とは、自律神経の働きによって調節されている身体機能の状態を知り、ある程度コントロールできるまで訓練を重ねる認知行動療法です。
調査の対象となる身体の機能は呼吸や脳波、血圧など多岐にわたり、調べる際はセンサーを用います。センサーに頼ることなく身体の機能や状態を理解し、セルフコントロールできるようになることが最終目標です。
認知療法
「認知療法」とは、物事の捉え方や考え方である認知に働きかけをおこない、辛い気持ちや不安感などを少しずつ減らして楽にしたりコントロールしたりする心理療法です。さまざまな種類がありますが、主に「コラム法」や「エリスの論理療法」などが認知療法に当てはまります。
コラム法
コラム法とは、柔軟な物事の捉え方や考え方を身につけるための認知行動療法です。コラム法では、ある出来事があった場合に、その出来事やその時に感じた考え、感情の強さなどを文章または数値にします。可視化することで客観的に物事を見られるようになり、悲観的な考え方からの脱却につながります。
エリスの論理療法
エリスの論理療法とは、理不尽な考え方をあらためるための認知行動療法です。「ABCDモデル」や「倫理情動行動療法」などの別名もあります。
たとえば、「物事は常に完璧におこなわなければならない」と考えている方は、少しの失敗も許されないとの思いから気持ちが辛くなります。考え方を変え、「少しくらい失敗しても良い」「誰でもミスをすることはある」と思うようになれば、緊張も和らぎ気持ちが軽くなるため、心の在り方も変わるでしょう。
ベックの認知療法
ベックの認知療法とは、自動思考に影響をおよぼすスキーマに着目し、精神疾患の改善を図る認知行動療法です。自動思考とは、物事が生じた際に、「怖い」「楽しい」など瞬間的に思い浮かぶ思考のことを指します。スキーマは、信念あるいは過去の経験から形成された認知です。
ベックの認知療法を試すことでスキーマに生じている癖を改善し、自動思考をプラスの方向への治療を目指します。
認知再構成法
認知再構成法とは、物事に対する過剰なネガティブな考え方や捉え方を修正し、適切な行動や対処をおこなえるようにする認知行動療法です。主にうつ病の治療に用いられています。
認知再構成法を続けることで、もしも不快な出来事が起きても負の感情をコントロールし、前向きに思い直す思考力が身につきます。
その他の療法
その他の療法とは、行動療法や認知療法とは異なる形で症状の改善を図る心理療法です。種類はさまざまありますが、「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」や「マインドフルネス認知療法」などが当てはまります。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは、考え方や感情を無理に変えるのではなく、そのままでいることを認めるための認知行動療法です。アクセプタンスには「受容」、コミットメントには「約束」などの意味があります。
ACTの目的は、辛い状況から抜け出す方法を自分で見つけ出せるようになることです。辛く苦しいことを受け止め、客観的な視点から確認し、心を乱す原因から距離をおけるようになります。
マインドフルネス認知療法
マインドフルネス認知療法とは、集中力を高めてネガティブ思考を改善するための認知行動療法です。「MBCT」と呼ばれることもあります。
マインドフルネス認知療法において、集中力を高める方法として用いられるのが瞑想です。瞑想しながら呼吸や身体などに意識を集中させることで、恐怖心や物事に対するマイナスな考え方を調整できると考えられています。うつ病などの、心の病の再発を防ぐ効果もあると実証されている心理療法です。
アサーション・トレーニング
アサーション・トレーニングとは、相手のことを尊重しながら、自分の意見や気持ちを発信するためのコミュニケーション能力を学ぶ認知行動療法です。「アサーション」には「主張」「表明」などの意味があります。アサーション・トレーニングにより、その場にふさわしい形で自己主張できる力が身につきます。
まとめ
認知行動療法は、大きく分けて行動療法と認知療法、その他の療法の3種類からなる心理療法です。さまざまな種類のなかから、それぞれに働きかける手段を選択して治療をおこない、症状の改善を目指します。
横浜市にある「キミィ・メンタル・サプリ」では、クライエント様がストレスと上手に付き合えるよう、認知行動療法によるカウンセリングをおこなっております。ネガティブになりがちな思考などにお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
2024/03/31
認知行動療法って?治療の具体例をご紹介
なんでもない些細なことで深く落ち込んでしまったり、物事をなにかとネガティブに考えてしまったりすることでストレスを感じていないでしょうか?このようなマイナスに捉える性質はご自身の性格によるものではなく、「認知行動療法」によって改善できる可能性があります。
今回は「認知行動療法」とはどのような治療なのか、その具体例をご紹介します。具体的にどのような治療法があるのか、どのような方法で治療を進めていくのか、さらにどういった効果が期待できるのかを知り、気軽な気持ちでカウンセリングルームまで足を運んでみてください。
認知行動療法とは?
「認知行動療法」は、日常生活のなかで感じるストレスや心理的抑圧の影響を受けてゆがんでしまった「認知」に働きかけて、思考のズレを修正し、心の負担を軽くすることを目指す治療法です。
「認知」とは、物事の捉え方や受け止め方のことです。認知には人それぞれの癖があるため、同じ物事に対しても人によってまったく異なる捉え方が生まれます。
認知の癖はその人の個性ともいえますが、これが正しいという形もありません。しかし、認知がゆがんでいる状態だと、あらゆる物事を極端にネガティブに捉えてしまったり、些細なことが過剰に気になったりして心の負担が大きくなってしまいます。認知行動療法によって認知のゆがみを修正することで、落ち込みやすい、考えすぎてしまうといったマイナスな性質を変えることができるのです。
認知のゆがみにつながる「自動思考」のズレ
認知が呼び出す瞬間的に思い浮かぶイメージのことを、「自動思考」と呼びます。たとえば、街中で犬を見かけたときに「かわいい」あるいは「怖い」と感じるような、無意識のうちに浮かんでくる思考のことです。
自動思考と現実にズレがあると、目の前にある物事(事実)から飛躍しすぎた思考が浮かんできてしまいます。犬を見て瞬間的に「怖い」と感じること自体は悪いことではありませんが、「吠えてきたらどうしよう」、「噛みついてくるのでは」というところまで思考を巡らせると、犬がいるという事実だけで大きなストレスを感じてしまうでしょう。
このような自動思考と現実のズレが、認知のゆがみにもつながっているのです。自分の自動思考と現実のズレに気づいて修正することで認知のゆがみも解消されていき、ストレスや恐怖・不安を感じやすい状態を克服することができます。
認知行動療法の具体例
認知行動療法は、もともとは異なる分野として考えられていた「認知療法」と「行動療法」をあわせたものです。「認知」と「行動」にそれぞれ働きかける治療をおこなってゆがみを修正し、心の負担を軽くすることを目指します。主に、以下のような手法です。
<認知行動療法の具体例>
・認知療法①:コラム法(認知再構成法)
・認知療法②:ベックの認知療法
・行動療法①:曝露療法
・行動療法②:リラクセーション法
認知療法①:コラム法(認知再構成法)
「コラム法(認知再構成法)」は、自分の思考を紙に書き出して整理・分析することによって現実とのズレを自覚し、少しずつ思考の幅を広げていく治療法です。以下のように3つ、5つ、7つの項目を使って思考をまとめ、より良い捉え方を探します。
<コラム法の種類>
書き出す項目
3コラム法 ・物事(どのような事実に対して)
・感情(どう思ったのか)
・考え(なぜそう捉えたのか)
5コラム法 3コラム法の項目に加えて
・他の考え(別の捉え方はできないか)
・他の考えに対する感情(捉え方が変わると感情はどう変化するか)
7コラム法 5コラム法の項目に加えて
・根拠(最初の考えが生まれた理由)
・反証(他の考えにつなげる別の可能性)
コラム法の最終的な目的は、自分の思考を見直して冷静かつ客観的な捉え方を見つけることです。はじめは3つの項目に沿って思考を整理し、次に5つあるいは7つの項目に沿って分析していくのが良いでしょう。日常で起こった物事について記録と分析を繰り返し、冷静かつ客観的な「他の考え」を導き出す訓練を重ねていきます。
認知療法②:ベックの認知療法
「ベックの認知療法」は、人間の思考の過程を「スキーマ」→「推論の誤り」→「自動思考」の3段階に分けて考え、根本であるスキーマの偏りを修正する治療法です。
心理分野における「スキーマ」とは、人間が人生経験を通じて獲得する「思考の枠組み」のことです。「赤くて丸い、みずみずしい野菜」という限られた情報だけで「トマト」が連想できるように、私たちは物事を考えるときに無意識にスキーマを利用しています。
スキーマが正常なものであれば、そこから信頼性の高い推論を導き出して自動思考につなげることができます。しかし、たとえば「自分はダメな人間だ」というような偏ったスキーマを持っていると、導き出される推論が誤ったものになり、自動思考のズレとしてあらわれるのです。
ベックの認知療法では、さまざまなテーマについて考え、偏ったスキーマをひとつずつ修正していくことによって認知のゆがみの改善を目指します。
行動療法①:曝露療法
「曝露療法」は、強い不安や恐怖を感じる物事に少しずつ触れて心身を慣らしていく、行動を起点として認知のゆがみも修正する療法です。
曝露療法は、特定の状況・シチュエーションに対して強い不安や恐怖を感じているときに有効です。たとえば、「大勢の人がいる場所に出かける」ことが怖いと感じているなら、最初は一歩足を踏み入れてみるだけからはじめ、慣れてきたらその場に数分間滞在する、その次は周辺を散歩してみる、というように徐々に刺激を増やしていきます。
信頼できるカウンセラーやご家族などとともに治療に取り組んで「大丈夫だった」という経験を重ね、最終的には自分一人だけでも問題なく「大勢の人がいる場所に出かける」ことができる状態を目指します。
行動療法②:リラクセーション法
「リラクセーション法」は、さまざまな行動によって緊張した心身をリラックスさせ、不安をやわらげる療法です。
リラクセーション法には「呼吸法」・「漸進的筋弛緩法」・「自律訓練法」などさまざまな種類があります。それぞれ深呼吸やストレッチ、瞑想的、エクササイズなどを通して心身に働きかけるもので、これらは認知療法とあわせて取り入れられることが多いです。
自分で心身をリラックスさせられるようになることで、緊張や不安をコントロールできるようになり自信につながります。
まとめ
「認知行動療法」は、認知および行動に働きかけて思考のバランスを整え、ストレスを感じやすい心の負担を軽くする治療法です。認知行動療法の手法としては、以下のような具体例があります。
<認知行動療法の具体例>
・認知療法①:コラム法(認知再構成法)
・認知療法②:ベックの認知療法
・行動療法①:曝露療法
・行動療法②:リラクセーション法
これらの治療法に取り組むことで認知のゆがみや思考のズレを修正し、ストレスや不安・恐怖を感じやすい性質の改善を目指します。
横浜市港南区にあるカウンセリングルーム「キミィ・メンタル・サプリ」では、認知行動療法を主軸としたカウンセリングをおこなっています。日々の生きづらさ、人間関係の問題などを解消する方法をともに探してみませんか?繊細で落ち込みやすい自分を変えたい、理想の自分になりたいとお考えの方は、ぜひお気軽に相談へお越しください。
2024/03/24
認知行動療法のやり方は?向き・不向きも解説
精神疾患の治療をするにあたって薬物療法を用いず、副作用や依存などのリスクを避けられるのが「認知行動療法」です。
今回は、認知行動療法の内容や効果、認知行動療法が向いている人・向いていない人の特徴について解説します。認知行動療法が自分に向いていそうか、はたまた他の治療法を検討すべきか参考にしてみてください。
認知行動療法とは?
「認知行動療法」とは、日常的に大きなストレスを感じて苦しんでいる方や精神疾患を持つ方が、ストレスの一因である認知のゆがみを修正して心の負担を軽減することを目指す心理療法です。
「認知」とは、物事の捉え方・受け止め方のことをいいます。同じ物事に対してポジティブな捉え方をする人とネガティブな捉え方をする人がいるのは、人それぞれの認知の癖があり、考え方が少しずつ違っているからです。
周囲の人が簡単にこなしていることに対して強い不安を感じてしまったり、まだ起こってもいないトラブルを懸念して消極的になってしまったりするのを「私はこういう性格だから仕方ない」と諦めてはいないでしょうか?些細なことで非常に大きな不安を感じる方や、なにかと極端にネガティブに考える方は、この「認知」にゆがみが生じている状態です。
このような場合は、偏った状態の思考バランスを整える「認知療法」と、行動を起こすことによって紐づけられた不安を解消していく「行動療法」の2種類の方法によって修正できる可能性があります。
認知療法
認知療法は、自分が偏った思考を持ってしまっていることに気づき、少しずつ考え方の幅を広げていく療法です。代表的なものに、「コラム法」があります。
コラム法では、不安やストレスを感じたとき、または悲しみや怒りなどの感情を覚えたときに、その瞬間を記録して振り返る方法です。「どんな物事に対して」「どんな気持ちになったのか」「なぜそう思ったのか」を見返しながら考え、自分の思考を分析します。医師やカウンセラーとともに、自分の思考が目の前にある事実と矛盾していないか、さらにポジティブな捉え方はできないかを考えを巡らせることによって、冷静で客観的な思考を取り戻していくものです。
行動療法
行動療法は、強い不安を感じる物事に少しずつ触れ、その行動をきっかけにして徐々に心を慣らしていく療法です。代表的なものに「曝露療法」があります。
たとえば、不安障害を持っている方が「電車に乗ること」に不安や恐怖を感じている場合は、カウンセラーなどと一緒にまずは各駅停車に乗って一駅だけの移動に挑戦します。行動による刺激に慣れてきたら移動距離を延ばしたり、快速電車に乗ってみたりして「大丈夫だった」という経験を積み重ねていき、最終的には一人でも問題なく電車に乗れるようになることを目指すというものです。
認知行動療法によって解消できる問題
認知行動療法では、以下のような問題やお悩みを解消する効果が期待できます。
<認知行動療法によって解消できる問題>
・何事もネガティブに考えてしまう癖
・特定の物事への強い不安・恐怖感
・瞬間的な感情に振り回されてしまう精神状態
・さまざまな精神疾患
それぞれどのような効果があるのか見ていきましょう。
何事もネガティブに考えてしまう癖
あらゆる物事に対して極端にネガティブに考えてしまう原因は、認知のゆがみ・自動思考のズレにあります。自動思考とは、ある物事に対して認知が呼び出す瞬間的なイメージのことです。
たとえば、同じ犬を目にしたときに瞬間的に「かわいい」と思う人と「怖い」と思う人がいるように、認知には人それぞれの癖があります。このとき、自動思考が現実と大きなズレを起こしている状態の場合「噛みついてくるのでは」といったマイナスなイメージが浮かび、目の前で大人しくしているだけの犬に対しても強い不安や恐怖心が生まれてしまうのです。
認知行動療法では、このような瞬間的な思考イメージを冷静かつ客観的に分析することで現実とのズレを自己認識し、ポジティブな方向へ考え方・捉え方の幅を広げていくことができます。
特定の物事への強い不安・恐怖感
電車に乗ること、大勢の人がいる場所へ出かけること、人前で食事をとることなど、特定の物事やシチュエーションへの強い不安や恐怖を抱えてしまっている方は、認知行動療法によって問題の解消を目指せます。カウンセラーや家族などの信頼できる相手とともに不安や恐怖を感じる物事に少しずつ挑戦し、時間をかけて心身を慣らし、日常生活を楽しめる時間を増やしていくことが可能です。
瞬間的な感情に振り回されてしまう精神状態
認知のゆがみがある状態では、強い不安や恐怖、悲しみ、怒りといった激しい感情が湧きやすく、自分の瞬間的な感情に振り回されてしまいがちです。認知行動療法によって思考のバランスを整えることで、目の前にある事実だけを冷静かつ客観的に捉えることができるようになります。
さまざまな精神疾患
認知行動療法は、さまざまな精神疾患を改善させる効果があります。主に、うつ病・パニック障害・社交不安障害・不眠症・摂食障害などです。薬物療法でなかなか回復の兆しが見えない方や、服薬をやめた後すぐに疾患が再発してしまった方には、認知行動療法による治療がより適している可能性があります。
認知行動療法が向いている人・向いていない人
認知行動療法は多種多様な精神疾患を改善できる治療法ですが、人によって向き・不向きがあります。患者さまの精神状態や置かれている環境をふまえて、どのような方法での治療が適しているのかを判断することが大切です。
認知行動療法が向いている人
認知行動療法が向いているのは、以下のような人です。
<認知行動療法が向いている人>
・治療に前向きである人
・自分を変えたいという意思を持っている人
・特定のテーマについて考えを深めることが好きな人
認知行動療法は「自分の認知と行動を見直す」ものであるため、誰よりも患者さま自身が積極的に自分と向き合い、考えながら治療に取り組んでいく必要があります。考えていることを紙に書き出して整理・分析する作業が好きな人には特に向いているといえるでしょう。
認知行動療法が向いていない人
認知行動療法が向いていないのは、以下のような人です。
<認知行動療法が向いていない人>
・治療に前向きではない人
・今は自分と向き合うことが難しい状態の人
・認知や行動よりも先に改善すべき事象がある人
自分を変えたいという明確な意思がなかったり、過去のつらい経験と今すぐに向き合うことが難しい状態であったりする場合は、認知行動療法には向いていません。認知行動療法は、患者さまご自身の協力が欠かせない療法です。治療に前向きであっても、たとえば現在進行形でハラスメントの被害を受けているような状態の人は、認知行動療法よりもまずは周辺環境の改善を優先する必要があります。
まとめ
「認知行動療法」は、物事の捉え方への働きかけをおこなうことで、心のストレスを軽減するための心理療法です。精神的・環境的にも適した状態の方が治療を受けることで、認知・行動にかかわるさまざまな問題解消が可能です。患者さまご自身が治療に前向きに取り組んでいただければ、薬物療法と同等あるいはそれ以上の効果も期待できます。
横浜市港南区のカウンセリングルーム「キミィ・メンタル・サプリ」では、患者さまが抱えているお悩みや日常生活のなかで感じている問題を解消し、本来の自分を取り戻すためのカウンセリングをおこなっております。「キミィ・メンタル・サプリ」で認知行動療法を主軸とした治療で自分と向き合い、「なりたい自分」を目指してみませんか。